感傷的なあまりに感傷的なその1
遠くに引っ越すことになった私が、週一回塾で算数を教えていた女の子に別れを告げていた。 「ごめんね。急に先生は遠くに行かないといけなくなってしまって辞めることになったの」 女の子は、さみしそうな顔をして涙をぽろぽろと流していた。 私のことをとても慕ってくれていたのに、こんなことになってしまって、とても申し訳ない気持ちになっていた。 算数がバッチリできるようになるまでいっしょにがんばろうね、と約束したのに。ごめんね。ごめんね。 ちょっとしんみりしながら、自転車の前のカゴに自分の白い上履きを一足乗せ、それから自転車に乗ってその町を出て行った。 途中で転倒して、そのはずみでかごの中の上履きが飛び出してしまった。 落としたところには、落とした上履きと並んでそれよりもふたまわりほど小さい上履きが落ちていた。ふとその小さい上履きが、さっきお別れをしてきたあの女の子のもののように思えて、二足とも拾ってカゴに入れた。 カゴの中で二つ並んでいる上履きを見るたびに、しんみりした気持ちになりながら自転車をこいでいた。
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